中つ国の月文字アモン・ヘン194号 15-16ページ掲載の「中つ国の月文字」(トニー・シェル)という記事の簡単な紹介です。
記事要約「ホビットの冒険」にトーリン・オーケンシールドがエルロンド卿に見せる『中つ国の地図』というのがあるが、そこに書かれている文字が「月文字」である。エルロンド卿の説明によると、「月文字」はルーン文字の一種で、文字の裏側からつきの光が射す時にしか見ることができない文字である。さらに、月文字の中には、文字が書かれた時と同じ季節の同じ月齢の月の光でなければ読めないというものもある。この「同じ季節の同じ月齢の月」というのは、19年に一度しか現れない。メトン周期(Metonic cycle)と呼ばれるのがそれで、新石器時代の終わりごろから、青銅器時代初期にはヨーロッパで知られていた天文現象である。 メトン周期に関しては、考古学的物証がある。紀元前3000年から1300年の間のものと見られる黄金の円錐形の帽子がスイス、ドイツ、フランスなどから見つかっており、この数多くの太陽や月が彫り込んである「魔法使いの帽子」は、メトン周期を計算するための道具だったという研究報告がある。 この時代のヨーロッパ人の天文学的知識は皆無に等しいを思われがちだが、考古学や神話学を紐解いてみると、太陽や月の長期的現象をかなり正確に把握していた様子がうかがえる。 トールキンの中つ国の文化は侵略される前のイギリスをモデルにしているが、農民、狩猟民、戦士たちといった「異教徒」の生活が基盤となっている。中つ国第三紀の終わりは、キリスト教以前の異教徒が住むヨーロッパの終わりと重なっている。 トールキンがこういった異教徒には昔から知られていたメトン周期のことなどを持ち出したのも、中つ国の物語に信憑性を持たせる意図があったと思われる。それは「指輪物語」があたかもホビット庄の住人によって書かれたように構成したのと同じである。 トールキンが果たして「メトン周期」そのものを知っていて「月文字」を創ったのかそれはわからない。ただ、トールキンの作品には、農村部に住む人々の太陽や月の周期に密着している様子が反映されていると言えよう。 補足「魔法使いの帽子」っていつも太陽や月がたくさんついているとんがり帽なのは、いつの間にか定着したステレオ・タイプだと思っていたのですが、あの帽子にそういう過去があったとは驚きです。メトン周期というのも、初めてお目にかかった言葉です。ウィキペディアに載っていましたが、このメトン周期は閏年を計算するのに使われたそうです。 |