2010年の『読んだ』読めるときにぼちぼち楽しみながら読んでます。読書会も3年目に入りました。
感想を書いたついでに内容が気に入った内容であったかどうか、また、英語の本の場合は、英語の難易度を併記してあります。内容評価は、◎=「たいへんおもしろかった」、○=「なかなかおもしろかった」、●=「まあまあおもしろかった」、△=「もうちょっとおもしろくてもよかったかもしれない」、×=「私には、この本のおもしろさはわからなかった」といった5段階評価。英語の難易度は、独断と偏見で、A=「カンタン」、B=「普通」、C=「手強い」の3段階にしてあります。ただし、これは、表現(文法)の難易度であり、単語に日常会話ではあまり使われない単語が多く出てくる場合は、+がついています。これは、表現がカンタンでも、特殊な分野(SFなど)では、あまり使われない単語や造語などが多くでてくるためです。
The Gathering あらすじ: アイルランドの12人兄弟の一人Veronicaは、すぐ上の兄Liamの自殺後イギリスへ遺体を引き取りに行ったり、葬儀の準備をしたりしながら、子供の頃を回想します。同時に現在の結婚生活・夫のこと・子供達のことなどもいろいろ思うことがあります。特に母方の祖母AdaのところへLiamと妹のKittyと共に送られたときのことをあれこれと思い出すのでした。あの夏、Liamの身に起こったことが今回の自殺へ繋がっている…。
2007年のMan Booker Prize受賞作です。暗い話ですが、文章が美しい。内容は重くてあまり楽しめたものじゃないんですが、ほんのちょっとした日常の描写が素晴らしく、読み進めることができました。 性と死の物語と言えるくらい、性に関する描写・考察・回想と死にかんするそれが入り混じっていて、私の好みのジャンルではありませんでした。 A Conspiracy of Kings あらすじ: Sounisの皇太子Sophosは、ある島にて母や妹達と共に「修行」に励んでいましたが、Sounis王反対派によって誘拐されてしまいます。誘拐され、奴隷として売られ、それを反対派が買い取って助けSophosを意のままに操るという計画だったのですが、Sophosは、反対派の思うほどお坊ちゃんではなく、自力で逃げ出してしまったのでした。次第に自分の置かれた立場を理解するSophosですが、どうやって反対派の傀儡とならずに王権を手に入れることができるのか…。
大好きなThe Queen's Thiefの最新刊ですが、何と!我等がGenの出番が殆どなかったです。これがすごくすごく残念。あっと驚くどんでんがえしや、読みながら「何かあるよ、また騙されるよ」という期待のある本だということには変わりないんですけれど、主人公がGenでない本とは。なので、評価低いです。 Sophosは嫌いではないけれど、Genの活躍が読みたいの。 あらすじ: 第二次世界大戦中に新聞にコラムを書いていた女性作家Julietは、とあるきっかけで戦後間もなくGuernsey島に住むDawseyと文通を始めます。Dawseyは、大戦中にナチス・ドイツに占領されたGuernsey島にてThe Guernsey Literary and Potato Peel Pie Societyを結成したいきさつなどを書き、Julietはそれを題材にした本を書こうと思いつきます。全編手紙で構成された本です。
前半はロンドンにいるJulietがDawseyを中心とするGuernsey島の住人たちや、自分の出版社にあてた手紙とその返信で構成され、後半は、実際にGuernsey島に渡ってそこから出版社や友達にあてた手紙と返信で構成されています。この本を読むまでGuernseyという島の存在すら知りませんでした。とても読みやすく、内容も重い内容(ナチスの侵略・強制収容所のことなど)を軽いタッチで描いています。 重いテーマを軽いタッチで書くことによって、より重い部分が後々まで心に残ったような気がします。 The Kalahari Typing School for Men あらすじ: ボツワナにて唯一の女性探偵事務所を営むマー・ラモツエ女史ですが、ライバル探偵事務所が出現してしまいます。ただでさえ苦しい経営なので、アシスタント兼秘書のマー・マクッチは、男性専用のタイピング・スクールをオープンさせ収入をあげようとします。マー・ラモツエとマー・マクッチのほほえましいコンビがアフリカの厳しくも明るさのある日常を描いています。
The No1 Ladies' Detective Agencyシリーズ第4巻です。これまでの3巻はすべて朗読CDでカバーしましたが、4巻はCDが図書館になかったので、本になりました。相変わらずマー・ラモツエが肝っ玉母さんのようでいいです。アフリカの現状は、貧困あり、エイズあり、古くからの迷信あり、と暗い部分も多いのですが、このシリーズは、全体的に非常に軽く明るい中でそれらの現状を映し出しているので、読みやすいです。 なかなか結婚しないマー・ラモツエですが、今回は、マー・マクッチのロマンスも出てきて、先が楽しみです。 The Key to Rondo あらすじ: レオが亡くなった大叔母さんからもらった不思議なオルゴールには、ロンドという一つの「世界」が入っていました。そのオルゴールを開ける鍵は、レオの嫌いな従妹のミミが偶然もらっていたのでした。偶然が重なってロンドへの入り口を開けてしまった二人は、ロンドを支配しようとする青の女王にミミの愛犬を連れ去られ、ロンドへ入り込むことになります。 エミリー・ロッダの最新シリーズ第一巻です。デルトラ・クエストやローワンシリーズ同様子供向け冒険物語ですが、デルトラよりも冒険性は低く、ローワンのような謎かけ部分もありません。昔からある童話へのオマージュがあちこちに散りばめられているシリーズで、それを見つけるのは楽しいかな。 次女と三女への読み聞かせに使った本です。読み聞かせるには丁度いい1章の長さです。 「獣の奏者 Ⅱ 王獣編」 あらすじ: 深く傷ついた王獣リランの飼育をまかされたエリンは、他の誰もが成しえなかったリランと「会話」することに成功します。そもそも王獣は互いに会話するものなのだという発見は、王獣を政治目的にしようとする企みに利用されそうになります。そして唯一王獣と会話のできるエリンもまた巻き込まれていくのでした。 エリンのようなある種「超越」した人でも、政治には勝てない、社会の動きには勝てない。しかし、それを援護する人もいて、動物ものの話だと思っていたのが、一国を揺るがす政治の舞台裏の話になってます。このあたり、守り人シリーズに深く通じます。 守り人シリーズ同様、主人公のかっこよさに惹かれます。エリンもいいけど、神速のイアルもいいです。 「獣の奏者 Ⅰ 闘蛇編」 あらすじ: 闘蛇衆のなかで余所者の娘として育ったエリンでしたが、母が失態を侵し処刑されたのをきっかけに蜂飼いのジョウンのもとで暮らします。蜂を始め、動物に興味を示すエリンは、獣ノ医術師を目指します。
動物と人間の関係を淡々とした語り口で描いています。ペットとしての動物ではなく、人間と同等の存在としての動物。現代文明においては失われてしまっていますし、この物語でも決して「同等」ではないのですが、エリンはそうありたいと願っている。彼女とジョウンの関係が実に素晴らしいです。 学校に行くようになっても、どこか「社会」に馴染めないエリンですが、ジョウンと代わってエリンを理解しようとしている先生がいいです。 「神の守り人(下)」 あらすじ: アスラと共に指定された日時までにジタンの祭儀場へ向かおうとするバルサでしたが、途中で盗賊と見せかけたタルの民に襲われ離れ離れとなってしまいます。それは、アスラだけをつれ去り、生き神にしてしまおうという企みの一環なのでした。そして、邪魔者のバルサは殺されることになっていたのでした。年に一度のロタ王家主催の祭りの場でアスラを神にしてしまおうとするシハナたちでしたが…。
「愛は世界を救う」という言葉が思い浮かぶ巻でした。ゲームの駒を進めるように人を動かし世界をかえていこうとするシハナに対して、大きな世界観などどうでもいい、自分にはアスラというたった一人の少女が今大切なのだ、というバルサは、理屈ぬきでヒーローです。やっぱりヒーローはそうでなくちゃね。 どんな人間でも生きる権利はある、人に自分の生き死にをどうこう言われたくない、というバルサの言葉は、この守り人シリーズを貫く大きなテーマだと思います。 「神の守り人(上)」 あらすじ: 幼馴染のタンダについて薬草市にやってきた女用心棒バルサは、そこで隣国ロタから人買に売られようとしている兄妹を助けます。しかし、その妹は、恐ろしい力を持っており、それを利用しようとする輩や、排除しようとする呪術師たちに追われることとなります。数奇な運命のもとに生まれた少女アスラをかつてチャグムを助けたように助けることができるのか。
ある意味守り人シリーズ第1作の焼き直しのようでありながら、しかし、さらに奥が深くなったお話だとも言えます。1作目のチャグムは、父帝に追われてはいたものの、チャグムそのものには、他の人への実害はなかったわけですし、バルサとしても、守ることに抵抗はなかったのです。しかし、この作品になると、バルサはアスラという強大な力を秘めた少女を守ることが、多くの人へ害を及ぼす可能性に直面するのでした。しかも、アスラの怒りは、虐げられてきた陰の民たちの怒りに通じるわけで、一部の人にとっては正義の味方とも取れないことはないのでした。 シリーズ内で主題を繰り返すのは、ともすれば、単なる繰り返しに終わりかねないところですが、それを超えて物語の新鮮さや深みを保っているのはさすがだと思いました。 「虚空の旅人」 あらすじ: 隣国サンガルの新王即位の儀式に出席のためサンガルを訪れる新ヨゴ皇国皇太子チャグムと星読み博士シュガは、ナユーグル・ライタの目と呼ばれる別世界に魂を奪われた少女と出会います。このままだと生贄となってしまう少女にかつて精霊の卵を宿した自らの姿を重ねて少女を救えないものかと心痛めるチャグムです。しかし、少女は単なる生贄ではなかったのでした。サンガル王国を揺るがす陰謀が少女を利用し、王家を倒そうという陰謀を実行に移そうとしていたのでした。
上橋菜穂子の守り人シリーズ第4作にあたります。これまではずっと女用心棒バルサが主人公でしたが、この巻では、バルサが登場せず、題名にも「守り人」が入っていませんが、まぎれもなく守り人の世界でした。バルサと共に父の手から逃げた「精霊の守り人」のチャグムが、皇太子としてバルサの元を去ってから初めてもシリーズに戻ってきたのです。「精霊の守り人」で呪術師の世界を垣間見た星読みのシュガというおまけまでついて! この巻では、チャグムとシュガの関係がとてもいいと思いました。読みながら、「十二国記」の陽子と景麒の関係を思い返していました。人の情を思いやるチャグムと陽子は、国を統べるという地位にありながら、個人の情を無視することができません。それを受け止め、時には悩まされながらもサポートしてゆくのが、シュガと景麒なのでした。理想的な主従関係なのかもしれませんね。 「海辺のカフカ(下)」 あらすじ: 字の読めないナカタさんと共に旅する星野さんは、入り口の石を見つけて入り口を開けます。一方父親から逃れて四国へやってきたカフカ少年は私立図書館の館長を自分の母だと感じながらも肉体的関係を持ちます。ナカタさんとカフカ少年の接点はあるのか…。
地元図書館にて下巻だけ入手しました。上巻は仕方ないので英語のオーディオブックを借りて凌いだんですが、不思議に違和感なく上巻から下巻へと移行しました。英語から日本語に移ったというのに。村上作品は英語に訳しやすい作品なのか。オーディオブックがナカタさんの章とカフカ少年の章のナレーターを別々にしていたのもおもしろかったです。 村上春樹の作品は正直なところよくわかったとは言えないんですが、しかし、読んでいて考えさせられることが多くあります。主人公のカフカ少年には、私が共感できることはほとんどなかったのですが、ナカタさんにはかなり人間の本質とはなにかを考えさせられるものがありました。そのナカタさんに大いに影響を受けた星野さんが一番自分に近いのかもしれません。 The Great Gatsby あらすじ: 1920年代のニューヨークにやってきた語り手のニックは、大金持ちの隣人ギャッツビーと、対岸に住むこれまた裕福な従姉のデイジーとの橋渡し役に借り出されます。ギャッツビーとデイジーはデイジーが結婚する前に深い中にあったということで、ニックはギャッツビーとデイジーの逢瀬に協力するのですが…。
1920年代のアメリカがどういうものだったのかがよくわからなくて、ネットなどで調べたのですが、それでもギャッツビーの金持ち度だとか、成金と昔からの金持ちの違いだとかがイマイチピンと来なかったです。当然普遍的なテーマも盛り込まれてはいるのですが、現実味がない登場人物ばかりでやっぱり物語にはうまく入り込めませんでした。 この本は1月の読書会の課題図書でした。以前にも原書で読んだことがあったので、内容は覚えていると思ったのですが、ほんとうに上っ面しか覚えてなくて、我ながらあきれました。一番共感できたのは、自動車修理工のウィルソンかもしれません。 「赤絵の桜」 あらすじ: 損料屋喜八郎始末控えの続編。今回は前回敵対した札差たちの一部と協力し、湯屋「ほぐし窯」の秘密に挑みます。
一巻で喜八郎が出会った料亭の女将「秀弥」との微妙な関係も、話が進むにつれて進展していきます。また、一巻では喜八郎に煮え湯を飲まされた札差が協力者となって陰謀をあばく話だとか、時代劇にはつきものだと思っていた勧善懲悪が、だいぶゆるやかになっているところがおもしろいです。 喜八郎のように粋で男前な人は実際にはいないのですが、いないからこそ物語の中のクールな喜八郎を安心して楽しめるのかもしれませんね。実際にそんな人がいたら、自分とのあまりの違いに自己嫌悪に陥りそうです。 「損料屋喜八郎始末控え」 あらすじ: 訳あって同心の仕事をやめ、損料屋を営む喜八郎は、深川に店を構えています。表向きは損料屋。しかし、裏では、与力の秋山の協力者・情報提供者として札差たちの悪をあばいていきます。
短編がゆるく繋がってひとつの話を成しています。それぞれ読んでも完結しているような話なんですが、全体像はやはり順を追っていかなければ見えてきません。粋な喜八郎の活躍が痛快です。 時代モノは漢字が多いのと慣れない単語や言い回しに疲れることもありますが、この本はそういうことをあまり感じさせないサクサク読めるほんでした。 |