2003年の『読んだ』2003年はオーストラリアのファンタジー作家・エミリーロッダのローワンシリーズと出会いました。子供たちに人気のデルトラ・シリーズよりも大人の鑑賞に耐える作品だと思います。
感想を書いたついでに内容が気に入った内容であったかどうか、また、英語の本の場合は、英語難易度を併記しています。内容評価は、◎=「たいへんおもしろかった」、○=「なかなかおもしろかった」、●=「まあまあおもしろかった」、△=「もうちょっとおもしろくてもよかったかもしれない」、×=「私には、この本のおもしろさはわからなかった」といった5段階評価。英語の難易度は、独断と偏見で、A=「カンタン」、B=「普通」、C=「手強い」の3段階にしてあります。ただし、これは、表現(文法)の難易度であり、単語に日常会話ではあまり使われない単語が多く出てくる場合は、+をつけておきました。これは、表現がカンタンでも、特殊な分野(SFなど)では、あまり使われない単語や造語などが多くでてくるためです。
Chocolat フランスの片田舎でチョコレートの誘惑を「悪」と見る牧師と「喜び」とするチョコレート屋の女主人ヴィアンを通して、現状維持をよしとする人々と変化を受け入れていく人々の亀裂がよく描かれている。もちろん作者は、ヴィアンの生き方に共感しているのだが、過去の罪を背負った牧師の内面もかなり細かく描かれていて、これまたおもしろい。 Artemis Fowl - The Eternity Code 今回の冒険は、どちらかと言うと、アルテミスが地下の「人々」を助ける形になっているので、今までとは、少し趣が違っている。ケンタウロスのフォーリーの奢った天才ぶりや、アルテミスとバトラーの絆が上手い具合に描かれていた。 Artemis Fowl - The Arctic Incident 兎に角、天才大悪童アルテミス・ファウルの奇想天外なアイディアがさえているし、地下のエルフたちのハイテクぶりもおもしろい。1巻同様、またまたドワーフのマルチ・ディガムも痛快なプロの悪党ぶりを発揮しているし、どのキャラクターも憎めないのがいい。しかし、実際に、このアルテミスみたいな子供がいたら、憎ったらしくてやってられないだろうな…。 Rowan of the Bukshah これまでのローワン・ワールドの集大成ともいえる作品。この巻だけ読んでも、おもしろさはわからないだろうが、ハリー・ポッターと同じで、一度この世界にのめりこんでしまうと、いろいろつながっていておもしろいのだ。ただ、ハリー・ポッターほど、前の巻に依存はしていないので、この巻だけでも読めないことはない。 ローワン・シリーズは、これまでの話を土台にして、さらなる謎解きをしていくのが特徴だが、この巻では、とくにそれが秀でていたようだ。1巻では、ローワンと彼の住む村の紹介、2巻では、村と「旅人」との関係、3巻では、村とマーリス人との関係、そして4巻では、村と敵国ゼーバックとの関係が明らかになったが、この5巻では、これまで知られていなかった村の過去や、村をささえてきた自然のしくみなどが明らかになる。 内容は、いつものごとき、蛇状の魔物・怪物(ロッダはどうも蛇がきらいらしい。どの巻にも蛇を思わせる怪物が登場する)や、その他の「敵」が登場し、シェーバの謎めいた予言を頼りにローワンが友人達の助けを借りて問題を解決してゆくパターンで、こう書いてしまうと、話が見え透いていておもしろくないようだが、実際には、パターンがわかっていても、おもしろいのだから、すごい。 ローワンの成長とともに、彼の夢(予見とも言える)を見る力が増したようで、これまでは、漠然と何かを感じていただけだったのが、この巻では、はっきりと映像となって見えるようになっている。しかし、この「夢」は、実際には、現実と微妙な違いがあった。暗い絶望的な予見に心沈んでいたローワンも、次第に自分の夢は必ずしも現実にはならないのだと、変な元気を取り戻してゆく。この巻のクライマックスは、何といっても、この夢の正体が判明するところだが、ローワン自身は、既に謎解きをしているのに、読者には、ヒントしか与えられないとあって、まるで推理小説のクライマックスを読んでいるようだった。そして、読者にも何が起こったのかがわかった時、大きな悲しみと運命の不思議をローワンと共有することになる。このクライマックスは、何度か読み返してしまったほど、心に沁みる場面だった。 この5巻に至って、ローワン物語はひとつの区切りを迎えたように思う。というのも、これまでの4巻で「謎」として残されていたものが、一応全て答えを与えられているからだ。さらに、ローワンがシェーバの代行を勤めるところまで来ており、シェーバの後には、ローワンがWise Manになるだろうことは、確実のようにも見える。強いて探すならば、何故ゼーバックがマーリス・旅人・リンの村を襲って領土に組み入れようとするのか、その理由は、まだ明らかになっていない。次の物語がもし出版されるとしたならば、このあたりについて書かれることになるのだろうか。それとも、1巻のように降ってわいたような「事件」が起こって、ローワンの「世界」が広がることになるのだろうか。 Rowan and the Zebak ローワンのシリーズ第4弾。またまた一気に読んでしまった。前三作に比べて、少しおどろおどろしい感じもある。終わりかたは、またいつものように一気に解決してしまうのだが、今回は、その解決策がちょっと見え透いていたかもしれない。 ローワンの活躍は、今回は「敵国」ゼーバックを舞台に繰り広げられる。これまでの3作で友情を築いたアラン、「旅人」のジール、マリスのパーレーンとともに「魔女」シェーバの謎をたよりにさらわれた妹を救出に行くのだが、「デューン・砂の惑星」を思わせるような砂漠や、難攻不落のように見える要塞を潜り抜けていかなければならない。ローワンたちと一緒に謎解きに挑戦しながら、あと20ページしかないのに、本当にハッピーエンドになるんかいな、とはらはらどきどきしてしまった。 今回の魅力は、「寄せ集め」の4人がそれぞれの特技を活かして仲間を導いていくところにあるだろう。さらに、自分たちの所属するグループの異端児である4人 ー「旅人」に育てられながら、生まれはゼーバックであるジール、「旅人」と「村人」の間に生まれたアラン、陸にあがった魚人パーレーン、肉体的強さを重んじるリンの村で弱者のローワン ー の、異端である故の素晴らしさを描いていると思う。 Rowan and the Keeper of the Crystal ローワンのシリーズ第3弾。またまた一気に読んでしまった。ローワンの活躍は、今回は海岸沿いの町、マーリスを舞台に繰り広げられる。策にたけたマーリス人達を信じたり疑ったりしながら、謎の言葉の意味を探る。またまたなぞ解きの話で、終わりもハッピー・エンドだとわかっているけどやめられない。今回の話は、特に舞台となる島の澄んだ水をたたえた岩のイメージがとても印象的だった。 Rowan and the Travellers ローワンシリーズ第2弾。またまた一気に読んでしまった。「魔女」シェーバの謎の言葉によって、「敵」がやってくることを知る村人たち。「敵」とは、この「旅人たち」なのか…。もちろん「敵」は「旅人たち」ではないのだが、謎の「敵」をあばくまでの過程がおもしろい。 Rowan of Rin 初めて読んだエミリー・ロッダの作品だが、おもしろかった。対象年齢が私の精神年齢と合っているのかも?自分の意思に反して同行することになった禁断の山への危険な旅を通して、弱虫だったローワンが自分の中に強さを見出していく話。また、強く見える人たちの中にも、思いがけない弱さが潜んでいることを書いている。 Letters from Thailand 何でも、初めて外国語に翻訳されたタイの小説なんだそうだ。何と言っても、この主人公の母親崇拝は異常だ。 「素顔の国際結婚」 「外国人」と結婚した日本人女性の体験談。主に日本在住の人の話だが、いろいろ共感できる部分があって、興味深く読んだ。出版から17年、日本の制度の中で改善された部分もあれば、まだまだこれからの部分もあると思う。 話題のハリー・ポッター最新巻。とにかくおもしろかった。いつものごとく馴染みの登場人物・生物がいいし、ハリーの思春期らしい感情の起伏の激しさもよかった。 発売翌日に買い、一気に読んでしまった。760ページという厚さを感じさせない。速いテンポのストーリー展開で、読者を飽きさせることがない。それにしても、1巻目からのハリーの成長、そして世界の広げかたの巧みなこと。4巻目で、魔法界の国際社会を登場させた後、5巻目は魔法界の政治腐敗が登場するのだから面白い。それだけ読者にも時事問題などへの関心度が問われてきていることになる。魔法省からの学校管理への圧力などは、現実世界の権力抗争を彷彿とさせる。さらに、今度の巻で秀逸だったのが、ハリーの感情起伏の激しさを描いたところで、何かにつけて熱くなるハリーは、その熱血性のゆえに重大な過ちを犯す。その過ちゆえにハリーにとって大切な人が亡くなり、試練が次の巻に続く、というわけだ。前巻では、ハリーにも、女性を意識するその芽生えのようなものがあったが、この5巻では、もう一歩踏み込んでいる。しかし、ハリーには、最終的には、恋愛よりも大切なものがあるのだ。十代後半に入ったハリー、ロン、ハーマイニの三人三様の青春ぶりもまたよく書けている。熱血ハリー、単純明快ロン、思慮深く、一歩先をゆくハーマイニ。三人の中で、客観的には少し劣るかのようだったロンが、今回浮上しているのもいい。双子の兄、フレッド、ジョージも、妹ジニーも健在で、大家族の素晴らしさも伝えている。新しく登場するルナ・ラブグッドも面白いキャラクターだし、常連のマルフォイ、スネイプ、ネヴィル、ハグリッドなどなど、これまでのファンを満足させてくれる要素もふんだんにある。これまどのように、ハリー・ダンブルドア対マルフォイ・ヴォルダモートという戦いの図式が崩れ、今回は魔法省が参入して、ハリー側は「敵」が2グループになってしまう。しかし、ハリー一人ではなく、「ハウス」を越えて仲間が集まってゆくのもとても好ましい。ハリーの世界がこれだけ広がったところで、さて、残りの2巻もこのテンションを維持してゆくことができるのだろうか。これまでのところ、私は3巻とこの5巻が中でも特に出来の良い巻だと思う。 「竜潭譚(りゅうたんだん)」 美しい虫には毒があると明言して置きながら、美しい人の毒については、ちょっと曖昧。終わりかたがイマイチ。 泉鏡花を読むときの面白さのひとつは、主人公が何時の間にかまやかしに会って異世界に入り込んでしまうところにあるのだが、この短編の場合は、そのきっかけがハンミョウにあった。主人公である千里がハンミョウを殺してしまったところから、まわりがおかしな風になり、千里は「とり憑かれて」しまうのだった。鏡花の古めかしい言葉づかいも、読んでいておもしろいのだが、今回は、青空文庫からダウンロードしたテキストだったので、横書きで読むことになった。しかも、ふりがなが漢字の上にふってあるのではなく、漢字の後にかっこに入って書いてあるので、どうもイマイチ古めかしさがぴんとこないところがあった。言葉のイメージというのがそのレイアウトと密接な関係にあることを改めて認識した。 「ここに地終わり海始まる (下)」 しかし、後半は恋愛小説とは、ちと違う。やっぱちょっと偶然が重なりすぎてやしないか? 「ここに地終わり海始まる (上)」 爽やかな恋愛小説というふれこみどおりの前半の展開。 the tale of murasaki 紫式部日記と源氏物語をミックスして、自立した女性というスパイスをふりかけたようなものかな。 一番興味深かったのは、紫式部と清少納言や和泉式部とのかかわりのくだりだ。清少納言とは、実際に対面する場面がいくつかあり、その落ちぶれた姿をあわれとも思い、宮廷から御役御免となった時の自分の将来を思いやったりする。逆に和泉式部の場合は、相手がこれからという人物なのに、自分はもう盛りを過ぎているという自覚があって面白い。この小説のどの部分のどの程度まで紫式部の日記から取っているのか、日記を読んだことがないので、わからないが、日記を読んでみたいと思わせるところがある。終わりかたが始まりをきちんとしめくくっていない感じがしたのだが、これは、意図的だったのか? 舞台裏の話は結構何でもおもしろいのだが、この映画の舞台裏はすごい。 「黒猫の三角 Delta in the Darkness」 犀川先生シリーズで有名な作家の別シリーズ。なんか、頭の良さを自慢してないか!? |