2004年の『読んだ』2004年はトールキンの作品とニコルソンの The Wind on Fire シリーズを堪能した年でした。
感想を書いたついでに内容が気に入った内容であったかどうか、また、英語の本の場合は、英語の難易度を併記してあります。内容評価は、◎=「たいへんおもしろかった」、○=「なかなかおもしろかった」、●=「まあまあおもしろかった」、△=「もうちょっとおもしろくてもよかったかもしれない」、×=「私には、この本のおもしろさはわからなかった」といった5段階評価。英語の難易度は、独断と偏見で、A=「カンタン」、B=「普通」、C=「手強い」の3段階にしてあります。ただし、これは、表現(文法)の難易度であり、単語に日常会話ではあまり使われない単語が多く出てくる場合は、+がついています。これは、表現がカンタンでも、特殊な分野(SFなど)では、あまり使われない単語や造語などが多くでてくるためです。
The Wind on Fire III - Firesong The Wind on Fire 3部作全部読んでよかった。やはり、3冊でひとつの作品だったのですね。 物事には何でも裏と表があり、そのどちらが欠けても本当ではない。超悪であるように見えるものの中にも善があり、逆もまた然り。闇なくして光はあり得ないというお話でした。中でもとても心に残ったのは、カーニボラス船長という人物です。恵み豊かな森の中に一人で住んでいるのですが、そこに苦難を乗り越えて永住の地を探しているマンスの生き残りがたどり着く。船長は彼らを暖かく迎え、マンスの中には、この森に住み着くことを希望する人が現れます。定住希望者にごちそうをふるまう船長は陽気で何の心配事もないように見えるのですが、実は、森の豊かさがいつか費えてしまうのではないかという心配のあまり、定住希望者に毒を盛って殺害しようとするのでした。豊かさを享受して足ることを知るのではなく、その豊かさがなくなってしまうのではないかと常に心配しているこの船長、現代人の象徴のようでとても悲しい人だと思いました。(自分も同じなんですが。) The Lion, the Witch and the Wardrobe 言わずと知れた名作を子供たちに読み聞かせたら、その良さを再認識したというところです。この本はやはり子供と一緒に読みたい一冊です。 前作と比較して不自然さが目立たず、息もつかせぬ展開だったのと、最後はどうなるのかという期待でいっぱいでした。相変わらず大人はふがいないのですが、それだけ読み手の子供たちにとっては主人公がよりヒロイックになるのでしょう。最終巻で様々な謎が解けるのか楽しみです。 いくつかの場面があまりに残酷で、児童向けなのにどうかな、と思ったものですが、現実を相当に誇張したものだと受け止めることもでき、子供なりに考えさせられることになるかと思いました。物語の中で、これでもかというほどに残酷非道なことをするMasterなのに、これを「悪」と言い切れないところがこの話の魅力のあるところなのかもしれません。 ところどころに「休憩」と称して一見無関係な人々の描写が出てくるのがおもしろく、中でも猫のミストと仙人犬顔の場面が哲学的でおもしろかったです。 Tales from the Perilous Realm トールキンの書いたファンタジー4作 "Farmer Giles of Ham"(1949), "The Adventures of Tom Bombadil"(1961), "Leaf by Niggle"(1964), "Smith of Wootton Major"(1967) を収めた一冊。どの作品も味があって素敵です。Farmer Giles of Ham は痛快な権力風刺作品でもあって、半世紀以上前に書かれたものなのに少しも風化していない気がします。 トム・ボンバディルの冒険は、詩なので、詩の苦手な私にはわからないところもいっぱいありましたが、ぼんやりと抱いていたトム・ボンバディルのイメージとはまた違った像だと思いました。指輪物語を読み返してみたくなりました。ニグルの木の葉は、少し宗教色が出ているかとも思いましたが、爽やかな終わり方に好感が持て、さらにニグルの立場に自分を置いてみて、他を押してもやらなければならないものとは何かを考えさせられました。最後の鍛冶屋の話は、実を言うとまだよくわかっていません。 The Wind Singer 冒険物語なんですが、舞台となる学歴尊重社会が日本の高度成長期の様子と重なって笑えてしまいました。 主人公の子供たちが数ある危機を乗り越えてゆくやり方があまりにも偶然すぎたり、子供だけでそんなことできるかー!?というような場面もたくさんありました。最後のほうでどうも別の力が働いていたようだ、というほのめかしがあるのですが、本当のところは3部作全部読まないとわからないのでしょう。 かなり気になってしまったのが、この物語に登場する大人たちのふがいなさ。まともな大人は主人公の両親だけ。父親のほうは子供たちには愛されているものの、社会的には負け犬なのでした。何故大人がこんなにもふがいないのか、その謎は2作目に隠れているのだろうかと詮索しています。 Unfinished Tales シルマリルの物語に続いてトールキンの中つ国で展開される様々な話を集めたものです。イシルデュアの最後の場面がピーター・ジャクソンの映画の最初と重なったり、サルーマンの隠し金庫の中身にあっと驚いたり、パランティアの歴史にふむふむと頷いたりする一方で、映画とも指輪物語の原作とも関係のないところの話もおもしろかったりするのでした。 Deltora Quest 3 - City of the Rats 出だしのほうは、早くも少しマンネリ化してしまった感じがしてしまったのですが、所々、はっとするようなおもしろい場面があったりして、次も読んでみようかな、と思わせるところもあります。 同じ作家のハリー・ポッターの背景を探る本は、途中で投げ出してしまったのですが、指輪物語のほうは、関連する神話・伝説の部分に惹かれて最後まで読みました。軽い読み物ですが、簡単に背景をおさらいするには、いい本かもしれません。 これは、どちらかと言うと、読むよりも見る本なのですが、いろいろな作家の絵にトールキンの原文が添えてあって、とても楽しめる一冊です。指輪物語だけでなく、シルマリル物語や終わらざりし物語からの一幕もあって、丁度終わらざりし物語を平行して読んでいたので、その一幕の絵を見て感動してました。 Deltora Quest 2 - The Lake of Tears ローワンシリーズよりは、話のテンポも速く、冒険の要素ももっといろいろ盛り込まれていると思います。わくわくするという意味では、もっとわくわくするシリーズですね。 The Silmarillion もう20年近く前に「指輪物語」に続いて読もうと買ったペーパーバック。何度も挫折しましたが、ようやく読了しました。「指輪物語」の原点ともなった中つ国のはじまりからアトランティスのように海へと沈んだヌメノール王国の滅亡までの長い歴史が刻まれています。指輪物語の奥の深さにただただため息。 ローワンシリーズがとてもおもしろかった作家なので、このシリーズにも手を出しています。相変わらず素敵なイメージの世界が広がっていますが、ローワンのほうが人物の内面を掘り下げるという意味では、勝っているように思います。 「ピーター・パン」 大人にならない子供ピーターよりも、大人でありながら、大人であることに疑問を持っているフック船長のほうがずっと魅力的です。 |