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2007年の『読んだ』

今年は去年終りそうで終わらなかった「マロリオン物語」シリーズ、年越しで読んだドラゴン・ライダーシリーズ、そして今年出版されるであろうハリー・ポッターの最終巻、と楽しみな本が目白押しです。当然去年と同じく買ったけれでも読んでいない本もなるべく読みたいと思っています。さて、今年は何ページ読むことができるでしょうか。

感想を書いたついでに内容が気に入った内容であったかどうか、また、英語の本の場合は、英語の難易度を併記してあります。内容評価は、◎=「たいへんおもしろかった」、○=「なかなかおもしろかった」、●=「まあまあおもしろかった」、△=「もうちょっとおもしろくてもよかったかもしれない」、×=「私には、この本のおもしろさはわからなかった」といった5段階評価。英語の難易度は、独断と偏見で、A=「カンタン」、B=「普通」、C=「手強い」の3段階にしてあります。ただし、これは、表現(文法)の難易度であり、単語に日常会話ではあまり使われない単語が多く出てくる場合は、+がついています。これは、表現がカンタンでも、特殊な分野(SFなど)では、あまり使われない単語や造語などが多くでてくるためです。

読んだ日題名著者出版社・年内容英語
11月24日The Subtle Knife Philip Pullman 著 Scholastics 1997B+ 
10月15日 Deltora Quest 3 - #4 Sister of the South Emily Rodda 著 Scholastics 2005
10月13日Deltora Quest 3 - #3 Isle of the Dead Emily Rodda 著 Scholastics 2004
10月10日The Golden Compass Philip Pullman 著 Alfred A. Knopf 1996B+ 
9月27日Bridge to Terabithia Katherine Paterson 著 Puffin Modern Classics 1977
9月27日Deltora Quest 3 - #2 Shadowgate Emily Rodda 著 Scholastic 2004
9月9日Tomorrow, When the War Began John Marsden 著 1993
9月2日Soul Eater Michelle Paver 著 Orion 2006A+ 
8月28日Deltora Quest 3 - #1 Dragon's Nest Emily Rodda 著 Scholastic 2004
8月25日Deltora Quest 2 - #3 The Shadowland Emily Rodda 著 Scholastic 2002
8月20日Deltora Quest 2 - #2 The Isle of Illusion Emily Rodda 著 Scholastic 2001
7月23日Harry Potter and the Deathly Hallows J.K. Rowling 著 Bloomsbury 2007A+ 
7月11日The King of Attolia Megan Whalen Turner 著 Greenwillow Book (An Imprint of Harper Collins Publishers) 2006
6月3日Deltora Quest 2 - #1 Emily Rodda 著 Scholastic 2001A+ 
5月7日Book Five of the Malloreon: Seeress of Kell David Eddings 著 Del Rey Book 1990A+ 
6月3日Deltora Quest - #8 Return to Del Emily Rodda 著 Scholastic 2001A+ 
5月26日The Children of Hurin J.R.R. Tolkien 著 Harper Collins 2007B+ 
5月22日Thursday's Child Sonya Hartnett 著 Bolinda Pub Inc; Unabridged版 Collins 2004
5月7日Book Four of the Malloreon: Sorceress of Darshiva David Eddings 著 Del Rey Book 1990A+ 
5月5日Deltora Quest - #7 The Valley of Lost Emily Rodda 著 Scholastic 2001A+ 
4月22日The Queen of Attolia Megan Whalen Turner 著 Harper Collins 2000B+ 
4月14日The Thief Megan Whalen Turner 著 Harper Collins 1996B+ 
3月21日Spirit Walker Michelle Paver 著 Orion 2005A+ 
3月15日Deltora Quest - #6 The Maze of the Beast Emily Rodda 著 Scholastic 2001A+ 
3月5日Tales From Earthsea Ursula Le Guin 著 Orion 2001B+ 
3月2日Harry Potter and the Goblet of Fire J.K. Rowling 著 Bloomsbury 2001A+ 
2月26日Deltora Quest - #5 Dread Mountain Emily Rodda 著 Scholastic 2001
2月15日Deltora Quest - #4 The Shifting Sands Emily Rodda 著 Scholastic 2001
2月2日透明人間の告白(上・下) セイントH・F著 新潮文庫 1987  
1月30日The Spook's Curse Joseph Delaney 著 The Bodley Head 2005A+ 
1月21日The Spook's Apprentice Joseph Delaney 著 The Bodley Head 2004A+ 
1月9日Eldest Christopher Paolini 著 Corgi 2005B+ 

The Subtle Knife Philip Pullman 著
11月24日 読了

あらすじ: 現実世界と妄想世界の区別がつかない母親の面倒をずっと一人で見てきた12歳のウィルは、失踪した父からの手紙を入手しようとする怪しい男たちから逃れ、別世界へと入り込む。そこでウィルはこれまた別の世界からやってきたライラとそのダイモン・パンタライモンに出会う。二人が出会った第三の世界は子供ばかりで、大人が見当たらない。大人は皆スペクターに魂を吸い取られてしまうのだった。アスリエル卿を探すライラ、失踪した父を探すウィル。二人は協力するが、ライラはウィルの世界で黄金の羅針盤を奪われてしまう。奪った相手は「神秘の短剣」と引き換えになら羅針盤を返してやろうと言うのだった…。His Dark Material3部作の第2巻。

世界各地で黄金の羅針盤の映画が封切られました。でも、オーストラリアは12月26日なのだそうです。ちょっとがっかり。シリーズの邦題は「ライラの冒険」ですが、この巻はライラも活躍しますが、それ以上にウィルの活躍がすごい。「ライラの冒険」じゃウィルは浮かばれません。この巻では3つの世界を行き来するのですが、どの世界もそれなりに問題をかかえているし、どの世界の子供も子供子供してません。1巻同様かなりシビアなお話です。

この本のクライマックスはリー・スコースビーがグルマンを気球で送り届けるあたりかな、と思います。気球と飛行船の戦い。なんだかのんびりしているような、そうでないような。子供ばかりの第三世界もかなりシビアでした。


Deltora Quest 3 - #4 Sister of the South Emily Rodda 著
10月15日 読了

あらすじ: デルトラ・クエスト、シリーズ3の最終巻。3つのシリーズの最終巻でもあります(今のところ)。3人の魔女を倒したリーフ一行は、最後の南の魔女の居場所がデルトラの城であることを知り、急遽戻ります。城を含めた首都の中では疫病が流行り、リーフの母・シャーンも瀕死の状態。デルトラの歴史書を守ってきたジョゼフもまた病に倒れます。最後の魔女の居場所を知っているらしいジョゼフにその謎を聞き出す暇もなく町がドラゴンに襲われます。城を守る兵たちはドラゴンを倒そうと戦うのですが…。

最強の敵は実は自らの城の中にいる。それを知ったときのリーフたちのあせりと恐怖はかなりうまく書かれていたように思います。バーダが旅の初めのほうで拾った他愛もないパズルがリーフの記憶と共鳴し、敵の真意を明らかにしたときは、ロッダ女史、なかなかやるなぁ、と唸ってしまいました。このパズルは要所要所で出てきていたので、いつかは重要な役を担うだろうと思っていただけに、やっぱりね、とも思いましたが。

最後の最後は予想したとおりの大団円だったので、これはいつものロッダ女史のファンタジーだな、と思いました。終わりがわかっている水戸黄門のエピソードみたいなものですが、それでもやっぱりおもしろかったです。


Deltora Quest 3 - #3 Isle of the Dead Emily Rodda 著
10月13日 読了

あらすじ: デルトラ・クエスト、シリーズ3の3巻目です。2人の魔女を倒したリーフ一行は、次の魔女の手がかりを探してトーラの魔法で灯りをともしているという灯台にやってきます。その灯台の灯りが消えてから久しいのですが、その灯台を守っていた灯台守とその娘の行方がわからない。リーフ一行の動きは既に敵に把握されていたらしく、灯台から敵の起こした嵐で危うくデルトラの国境外に連れ去られそうになるリーフ一行ですが、忽然と現れた船に助けられます。その船には不思議な魔法がかかっているらしいのでした。

灯台から幽霊船へと続く場面と、魔女のいるという島へ至る場面と二つの大きな話で構成されているような巻ですが、その二つが最後にうまく繋がってちょっとびっくりしました。前の巻からの伏線もここに来て活きてきたなと思いました。この巻はなかなか読ませてくれます。ロッダ女史の「あの人だと思っていたら、実はこの人だった。」という常套手段が、常套手段だとわかっていても、それでもびっくりしてしまう、というところがすごいです。特に魔女の正体はこの巻が一番凄まじかったかな、と思います。

ロッダ女史の謎かけはどの物語でもおもしろいのですが、この巻では視覚に訴える謎かけで、これは映像化したらおもしろいだろう、と思いました。また、幽霊船の呪いの部分もパイレーツ・オブ・カリビアンの第1作を思わせる部分もあって、これがなかなかぞくぞくさせるものでした。日本ではアニメ化されているようですが、CGをふんだんに使った実写映画にしてもおもしろいと思います。


The Golden Compass Philip Pullman 著
10月10日 読了

あらすじ: 物語は、我々の住む世界と似てはいるけれど、少し違うパラレル・ワールドが舞台です。主人公ライラはオックスフォード大学内で孤児として育ちましたが、後見人に叔父のアスリアル卿がいます。卿は北極圏探検の第一人者で殆どライラと会うことはありません。この世界の人間には全てダイモンと呼ばれる動物の形をしたものがくっついていて、常に行動を共にしています。ライラにはパンタライモンというダイモンがいますが、ライラはまだ子供なので、そのダイモンであるパンタライモンは色々な動物になることができます。大人になると、このダイモンの形はある一つのものに決まってしまうのでした。ライラはある日美しく聡明なコールター夫人に引き取られ、ロンドンで助手をすることになりますが、この夫人が実はしばらく前から起きていた各地での子供たちの誘拐事件と関わっていることを知り、ライラは逃げ出します。逃げ出したところでライラは誘拐された子供たちを救出すべく動き出したジプシーの一行と出会い、北極圏での救出作戦に参加することになります。北極でライラたちが目にした誘拐の理由というのは…。

今年末にミラマックスが映画化したものが封切られます。その予告を「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」の映画を見に行ったときに見て、この本を手にしました。C.S.ルイスの「ナルニア国物語」の対極に置かれたり、ジョン・ミルトンの「失楽園」をもとにしている、などということは後から知ったのですが、扉を開けたときにミルトンの失楽園からの一節が引用されていてどきりとしました。その中の一行に出てくる言葉がHis dark materialsなのですが、原書のシリーズ名はHis dark materials となっています。邦題のほうは、「ライラの冒険」というのだそうで、なんだか全然イメージが違ってがっくりしちゃったんですが、内容はまぁ、「ライラの冒険」と言えないことはないですね。

この本を読んで俄然ミルトンの失楽園を読んでみたくなりました。単に冒険物として読んでもおもしろいとは思うのですが、宗教がらみでいろいろ考えていくともっと面白い読み方ができるんじゃないかと思います。3部作なので、残りの展開が気になるところですが、とりあえず今までのところは、性善説を否定した神のいない物語とでもいいましょうか。


Bridge to Terabithia Katherine Paterson 著
9月27日 読了

あらすじ: 今度こそ5年生の中で一番速く走るぞ、と毎日農場で走る練習をしているジェスは、貧しい兼業農家の長男ですが、姉2人、妹2人の中で唯一の男の子です。そんな中空き家だった隣の家にワシントンの都会からレスリー一家が引っ越してきます。そして、意気込んで参加した5年生のレースでジェスはレスリーに抜かれてしまうのでした。ぎこちなく始まった2人の関係ですが、やがてジェスはレスリーとの「テラビシアごっこ」に夢中になります。テラビシアとはジェスとレスリーの想像上の王国なのです。両親が作家であるレスリーは、想像力豊かで、一緒にいて少しも飽きないのでした。学校でも家でも疎外されてきたジェスに新しい世界が広がっていきます。

ディズニーが映画化したものを3ヶ月前に見たのですが、予備知識0で見に行って大泣きしました。でも、爽やかな終り方に好感が持てたのです。今回原作を読んでいて、映画は原作にかなり忠実だと思いました。30年前に書かれた本ですが、少しも色あせていません。映画の予告などではファンタジーかと思っていたのですが、そうではなく、友情の物語です。

映画によって結末はわかっていたものの、読んでいてまた泣いてしまいました。そして、後書きに、作者の息子の経験を土台にした話だというのを読みました。でも、悲しい物語というのではなく、悲しみの中にも希望が見出せる素敵な話だと思います。


Deltora Quest 3 - #2 Shadowgate Emily Rodda 著
9月27日 読了

あらすじ: デルトラ・クエスト、シリーズ3の2巻目です。邪悪な魔女たちを取り除くべく旅を続けるリーフ一行ですが、エメラルド・ドラゴンの領域に入ったとたんに旅芸人の一行に捕らえられてしまいます。しかし、座長がリーフを昔亡くした息子の再来だと信じてしまったため、一行の待遇が変り、仲間に入れてもらえることになりました。敵の目をくらますには丁度いい、と仲間になったのはいいのですが、座長の思惑は、単にリーフを息子の代わりにそばに置いておくというものではありませんでした。紆余曲折を得て、魔女の住むと言われる館へたどり着いた一行には新たな試練が待ち構えているのでした。

疑心暗鬼にさいなまれるリーフ、血気盛んなジャスミン、慎重で頼りになるバーダ、相変わらずの3人ですが、前作同様、4人目の助っ人として、今回は蜂蜜売りのSteven (と Nevets)が途中から加わっています。(日本語ではスティーブン・ネヴェッツという名前ではないようです。)何でもすぐ盗んでしまうずる賢い少年や、息子かわいさに他には何も見えなくなってしまう旅芸人の座長や、脇役もおもしろいです。

悪者だと思っていた人と、犠牲者だと思ったいた人が実は逆さまだったという後半の展開はおもしろいのですが、この「いい人だと思ったら実は…。」というのは、ほぼ全巻にわたって貫かれているプロットかもしれません。敵のメッセージのやりとりを謎解きしていくところなどは、謎かけが得意なロッダ女史の面目躍如といったところでしょうか、面白かったです。


Tomorrow, When the War Began John Marsden 著
9月9日 読了

あらすじ: オーストラリアの田舎町に住むエリーは、ごく普通のティーンエージャー。仲のいい子たち集めて1週間のキャンプ旅行を計画します。殆ど人の来ない峡谷でキャンプ旅行を充分に楽しんだ一行が町外れのエリーの家に戻ってみると、様子がおかしいのです。人っ子一人いない家の前では飼い犬が何匹か死んでいました。エリーたちがキャンプ旅行を楽しんでいる間にオーストラリアは侵略されてしまったのでした。捕らわれなかった人たちにいったい何ができるのか…。

オーストラリアのヤングアダルト部門では常にトップ10にランクインしているシリーズの一巻目です。図書館でオーディオ・ブックを見つけたので聞いて見ました。自分たちの住んでいたところが戦場となったことが次第に現実味を帯びてくる、その描写がとてもリアルで、本当にこういうことがあり得るかもしれない、と思わせるところがいいです。人を殺したくない、傷つけたくない、でも、自分たちの身を守るためには、やむを得ない。そういうジレンマがエリーたちを苦しめます。また、なんらかの行動に出て自分たちを危険にさらすか、行動せずに誰かが助けてくれるのを待つのか、そういう葛藤も読ませてくれます。

エリーのグループの中には、神を信じるもの、血気盛んなもの、冷静沈着なもの、パニックに陥るもの、様々なリアクションがありますが、その中で自分たちなりに考え行動していく様子がかなり現実的で好感が持てます。さらに、戦争という状況にありながら、男の子と女の子が互いに惹かれあっていく様子も、ごく自然に描かれています。時には、「そんなにうまく行くはずないじゃん。」と思うところもありますが、全体的には、よく練られたストーリー展開だと思います。シリーズの第一巻なので、続きも聞いて見たいです。


Soul Eater Michelle Paver 著
9月2日 読了

あらすじ: Chronicles of Ancient Darknessの3作目。6000年前のヨーロッパを舞台に狩猟採集をしながら生きている人々の物語です。前2作で2人の黒魔術師を倒したトーラックは、大ガラス族に居候中ですが、ある日狩りの途中で唯一の家族であるWolfが何者かに連れ去られてしまいます。Wolfを助けたい一心で黒魔術師たちの罠かもしれない追跡が始まります。もちろんこれまで苦難を共にしたレンも同行します。今回は今まで行ったこともない遠い北の地まで旅することになります。魔術師たちの罠よりも、厳しい自然の前に屈してしまいそうになります。それを助けてくれたのが白キツネ族でした。そして、トーラックとレンは大ガラス族のいる森へ戻るようにと言われます。トーラックはこのまま進むと世界に禍をもたらすとまで言われてしまうのです。

北の雪と氷に覆われた土地が6000年前いかに人間にとって厳しいところだったか。さらには、そういう条件の下でも生活していた人々がいて、その様子がまた丁寧に描かれています。このシリーズの大きな特徴は、いかにして食料を手に入れるか、水を手に入れるか、などといった、生きていく上での最低条件のようなものを常に視野に入れて書かれているところだと思います。

厳しい自然が舞台である話の筋は、Wolfを奪った黒魔術師たちの一行が悪魔を呼び出す儀式に生贄を必要とし、その中にWolfが含まれている。それをいかに助けて無事森へ戻るか、ということなのですが、トーラック、レン、Wolf,それぞれが試練をくぐらなければなりません。そして、無事森へ帰り着いた一行ですが、最後の最後にトーラックにとって暗い将来を暗示する事実が明らかになります。次回作ではトーラックたちがどうなるのか、とても気になるところです。全6作の予定だそうです。トーラックたちが次に行くのは、森の奥の奥、昔トーラックの母が生まれたあたりなのじゃないかという気がしています。


Deltora Quest 3 - #1 Dragon's Nest Emily Rodda 著
8月28日 読了

あらすじ: デルトラ・クエスト、シリーズ3の1巻目です。デルトラのベルトを取り戻して敵をデルトラから追い出したのが最初のシリーズ。ピリン笛を元の形に戻して敵地から奴隷たちを取り戻したのが2つめのシリーズ。ようやくデルトラにも平和が戻った、と思うのはまだ早く、敵がいなくなったというのに作物は不作続き。そして、城の図書館の近くにある水晶玉からは敵の呪文とも言える言葉がひっきりなしにリーフを悩ませます。そんな折、失われていた古文書の一部が見つかり、デルトラには実はまだ悪い魔法がかけられていて、デルトラの4隅にFour Sistersと呼ばれる魔女が置かれているというのでした。その魔女たちを封じるには、伝説の生き物であるドラゴンが必要だと言うのです。領地の各地を視察するという名目でドラゴン探しに出かけるリーフ、バーダ、ジャスミンなのですが…。

途中で出会う半人半獣のフォーンみたいな生き物が情けなくて弱虫で、こいつはどうも~、と思っていたら、案の定最初のシリーズの最終巻と同じ展開になってました。まぁ、これだけ書けば同じような展開が出てきても仕方ないですよね。でも、リーフと共にまだまだデルトラの謎を解いていく楽しみは続きそうです。

とりあえず、ジャスミンの機嫌がいいところで旅が続いていくというのが、前回よりも楽しいスタートでした。やっぱりリーフが一番信頼しているのはバーダとジャスミンですからね。シリーズの最後にリーフとジャスミンは結びつくのでしょうか。そこまでハッピーエンドじゃないか。


Deltora Quest 2 - #3 The Shadowland Emily Rodda 著
8月25日 読了

あらすじ: デルトラ・クエスト、シリーズ2の3巻目です。ピリン笛の最後のパーツを手に入れたリーフ一行はいよいよ敵地に乗り込んで奴隷となって捕らわれているデルトラ市民を助けようとします。ここにきてジャスミンの言動がおかしくなり、問い詰めたリーフはようやく何故ジャスミンが城から一人で出立してしまったかということを知ります。まだ見ぬ妹と母が奴隷として敵地に捕らわれていると言うジャスミン。しかし、敵は既に善人だった奴隷たちを操る術を持っているらしいのです。

あっさり笛を手に入れたリーフ一行で、これにはちょっと拍子抜けなんですが、あっさりあんなに苦労して手に入れたベルトを手放すリーフもリーフだなぁ、と苦笑い。しかし、それがこの巻の最後になって意外な事実が明るみに出、ベルトを何故手放したかという謎が解ける仕組みになってます。

終り方がなかなか素敵で、意外な結末でよかったです。


Deltora Quest 2 - #2 The Isle of Illusion Emily Rodda 著
8月20日 読了

あらすじ: デルトラ・クエスト、シリーズ2の2巻目です。ピリン笛の一部を手に入れたリーフ一行は、他のふたつの部分を手に入れるべく旅を続けます。遠い昔に仲たがいした笛の一族は3つに別れ、互いに憎みあっています。その2つめの一族は、自分たちの島を追われ、漂流生活を送っていました。島には、大蜘蛛がたくさん住み着いて戻れないというのです。そして、笛の一部はその人が入れない島にあると言うのでした。

この巻では、盲目的に何かを信じることの恐ろしさのようなものが書かれています。昔から伝えられてきたまわりの部族の恐ろしさや、島が一番安全なところである、という信仰に近い思い。これはどの国にでもある排他的な民意のようなものを象徴しているように思います。しかし、それを越えて成し遂げなければならないこともある。

リーフの秘密主義に懐疑的だったジャスミンですが、一緒に旅をするうちに昔のように通じ合うようになってきてます。このまま仲良くいけるといいのですけれど。


Harry Potter and the Deathly Hallows J.K. Rowling 著
7月23日 読了

あらすじ: 待ちに待ったハリー・ポッターシリーズ最終巻です。ハリーがヴォルデモートを倒すにはホークラックスを全て破壊してからヴォルデモートを倒さなくてはいけません。ホークラックス破壊の旅に出るハリーには、ロンとハーマイオニーが同行します。魔法省がヴォルデモートの手に落ちてからは、三人の旅は困難を極め、なかなかホークラックス発見の鍵も見つかりません。やがて少しずつホークラックスが何でどこに隠されているかがわかり、順に破壊することになるのですが、それと平行してダンブルドアの過去が次第に明らかになります。ダンブルドアの過去には不思議な「死の秘宝」が深くかかわっていました。やがて、ハリーには、ヴォルデモートも死の秘宝の一つを探していることがわかります。ホークラックスを全滅させるのが先か、ヴォルデモートが最強の武器を手に入れるのが先か。そしていよいよハリーとヴォルデモートの一騎打ちのクライマックスがやってくるのでした。

これまでで一番暗い作品です。人もたくさん死ぬし。明るい話題はほとんどないと言っていいくらい。これはもう児童文学ではありませんね。これまでの謎がいくつも明らかにされているので、シリーズファンとしては必読の一冊です。発売同時に購入して607ページ一気に3日で読みました。今またゆっくり読み返しています。これまでの大きな謎だった「プリンスは敵か味方か」や「RABは誰だ」の謎にも当然答えが出ていますし、ペチュニアおばさんが何故魔法界のことをあれだけ良く知っていたのか、などもわかってきます。

発売前から死ぬのは誰だなどと憶測されていた作品ですが、こいつは絶対死ぬよね、と思った中で死ななかった人もいれば、絶対死なないと思った中で死んでしまった人もいて、驚かせてくれました。いろいろ突っ込み入れられるところもあるとは思いますが、全体的には満足の行く作品に仕上がっていると思います。途中ハリー三人があちこち場所を変えて旅する場面ではちょっとだれるところもあったのですが、それ以外ではむしろ伏線ありすぎ、事件起こりすぎというくらい盛りだくさんな内容でした。この本はこれまでの6冊を読んでいないと楽しめません。


The King of Attolia Megan Whalen Turner 著
7月11日 読了

あらすじ: 邦訳では「盗神伝」というシリーズになっているそうですが、その3作目です。我らが盗人「ジェン」が、この3作目でも大活躍するのですが、1作目、2作目を読んでいないと、この物語のかなりの部分でジェンはただのでくのぼうにしか見えません。前作を読んでいる読者にとっては、ジェンがいかにすごい人物であるかを知っているので、でくのぼうというのはただの芝居に過ぎず、そのウラにある真意を探るのに忙しくなります。1作目はジェンの視点から描かれ、2作目はジェンとその他何人かの視点から描かれていましたが、この3作目では、ほぼ全てがアットリア女王の護衛軍に属するコスティスの視点で語られています。なので、読者はコスティスの知らないジェンの過去からいろいろと話を補いながら楽しめるという寸法になっています。なかなか粋な計らいです。そして、最後まで期待を裏切らずに読者を驚かせてくれる素敵なお話でした。

コスティスという新しい登場人物も実直でとても魅力的です。女王に忠実でありながら、自分の判断というものができる。そのために仲間からはずれていくことになりますが、最終的には、仲間からも尊敬され、女王の信頼をも得ることができた果報者と言えます。ジェンにずっとひっぱりまわされいいようにされたようでいながら、実はジェンにずいぶんとかばってもらっていたことも最後になってわかり、改めてジェンのすごさを読者もコスティスと共に学ぶことになります。

前二作と違ってジェンの冒険活劇的要素はかなり薄れてしまいましたが、今回はジェンの政略手腕が大発揮され、それが表立って出てこないところがまた読者をやきもきさせます。最終的には、「ジェンのことだから、絶対何か策略をめぐらしているに違いない。」と思わせるその期待を裏切らないところが嬉しいです。アットリア女王もまた二作目同様、表向きは冷酷無慈悲でありながら、しかし、ウラの人間的な面を覗き見ることができるようになっていて、ますます好感が持てる女性になってきました。私の好きなメイガスは、2作目よりさらに出番が減らされ、ほとんど出番がなく、ジェンのお父さんも今回は登場しませんでしたが、その代わり女王付きの女官やコスティスなどの素敵な人物たちが脇を固めていてちっとも飽きさせません。神に「もう寝なさい」などと言われるのもジェンくらいのものでしょう。そして、我らがジェンの活躍はまだまだ続きそうなのです。次の冒険がとても待ち遠しいのでした。


Deltora Quest 2 - #1 Emily Rodda 著
6月3日 読了

あらすじ: デルトラ・クエスト、シリーズ2の1巻目です。全ての宝石を手に入れて王権を取り戻したリーフたちですが、まだまだデルトラは平和から程遠く、多くの奴隷がシャドウ・ランドにとらわれたままになっています。奴隷たちを助けるためにはどうしたらいいのか。その鍵を握るのが、デルトラ王国崩壊の際に全て焼失したと思われていたデルトラの歴史書でした。伝説だと思われていたことが実は歴史の一部であることを知ったリーフは、ドゥームと共に失われたピリン笛を取り戻すべく旅立とうとするのですが、行方不明になったジャスミンの捜索のために旅立ちは延期されます。そしてジャスミンを見つけ出したリーフ一行は意外な事実を知ることになるのでした。

シリーズも2作目になってそろそろアイディアもつきてきたんじゃないか、と思ったのですが、どうしてどうして。楽しませていただきました。ロッダ女史、なかなかやってくれます。彼女の作品にいつも登場する謎かけがあいかわらずおもしろく、また意外な人物の意外な役割がおもしろくありました。

いつものごとくあっけない終わり方ではありますが、多分対象年齢が低めに設定されているために余韻を残す終わり方になっていないのだろうな、と思ったりもするのでした。


Book Five of the Malloreon: Seeress of Kell David Eddings 著
5月7日 読了

あらすじ: ガリオン一行は、ザンドラマスを追ってとうとう南の果ての島までやってきます。そこで、様々な妨害に会う一行ですが、結局は神託の通りにザンドラマスと同時に闇の珠・サーディオンの前に進むガリオン。そこで誰をトーラックの代わりとして「神」にするかという選択が行われることになります。ザンドラマスが「神」として選んだのは、ガリオンの息子・ゲラン。そしてガリオンは一行の中から「神」を選ばなければならなくなります。

ようやくガリオンとザンドラマスの直接対決が実現します。と言っても、二人が魔法を尽くして戦うわけでも何でもなく、お互いが「神」候補を選んで、それをケルの預言者に選択させるというものでした。本の3分の2あたりで、その選択も済み、あとはこれまでのいろいろな話の結末が少しずつついていくという展開になっています。長い長い旅路の末にガリオンを始め多くの登場人物たちのその後が語られるので、これまでずっと話を追ってきた読者としては、どれにも一応のオチがついてめでたしめでたし、というところです。

ガリオンがファルドアの農場を出発してから10巻分の本を費やしてここまで来たわけですが、前半のベルガリアード物語がどちらかと言うと冒険物語だったのに比べ、マロリオンは様々な「愛」が語られた物語だったように思います。そのどれもが個性的でおもしろく、こういう愛の形もあるか、と思いながら読み進みました。複雑な人間関係を描くことができたのも、長編物語だからこそですね。


Deltora Quest - #8 Return to Del Emily Rodda 著
6月3日 読了

あらすじ: デルトラ・クエスト、シリーズ1の最終巻(8作目)です。とうとう、全ての宝石を手に入れたリーフ一行は、ベルトの主である王位後継者を見つけるだけになりました。かつて悪の勢力に追われたエンドン王と王妃。王妃はそのとき懐妊中でした。頼りにしていたトーラが匿ってくれなかったときにエンドン王はどこに隠れたのか。そしてその後生まれた子供が、復活したデルトラのベルトの主であり、悪の勢力を倒す鍵を握っているのでした。ここにきてようやく抵抗勢力と組むこととなったリーフ一行ですが、あと一歩のところで思いもかけない人物からの裏切りに遭います。そして、エンドン王とその子供が思いもかけない人物だったことが判明します。

リーフ一行が最後の最後まで信用していなかった抵抗勢力ですが、ここにきてようやく手を結びます。全てうまく行っているかに見えたその矢先に手痛い裏切りに遭います。リーフ一行絶体絶命のピンチ!当然ハッピー・エンドなわけですが、最後まで謎に次ぐ謎で、このシリーズの中で一番おもしろい本でありました。

この巻では、これまでの色々な謎の答えが示されます。このシリーズの少しだけ物足りないところは終り方がいつもあっけなくてさっさと終ってしまう感じがするのですが、この巻も最終巻だと言うのに、そんな終わりかたでした。でも、8巻続けて読んできた最後の巻はやはりまとめとしておもしろかったと思います。


The Children of Hurin J.R.R. Tolkien 著
5月26日 読了

あらすじ: 「指輪物語」の舞台となる中つ国の歴史の中にフーリンというエルフ族と深い親交のあった人間がいましたが、これはその子供たちの悲劇の物語です。この時代には、「指輪物語」で悪の頂点に立っていたサウロンはまだモルゴスの副将でしかありません。エルフ族と共に悪の根源であるモルゴスを倒す戦いに出陣したフーリンは捉えられ、モルゴスに呪いをかけられます。その呪いとは、フーリンの一族は皆悲劇の人生を送るというもので、その通りになってしまいます。子供の頃にエルフ族に預けられ、体力・知力どれを取ってもエルフ族にひけを取らない息子のトゥーリンが物語の中心です。トゥーリンはその誇り高き性格のせいでエルフ族の中にはいられなくなり、無法者たちのリーダーとして長い間過ごします。やがて別のエルフ族の中に混じって生活するようになるのですが、ここでもまた彼の誇りや奢りが平和な暮らしには結びつかないのでした。トゥーリンの母と妹も同じように悲劇的な人生を送り最後まで悲劇的な物語です。

この本に出てくるお話は、トールキンの息子であるクリストファー・トールキンが書き残された様々な原稿をまとめたものです。したがって、「シルマリルの物語」や「終らざりし物語」、さらには、まだ邦訳されていない中つ国歴史書シリーズを読んだ人ならば、既に知られている話です。

しかし、こうして注釈抜きで一冊にまとめられ、さらに文体もかなり読みやすくなっているので、シルマリルや終らざりしまでは読みたくないけれど、「指輪物語」で知った中つ国のことをもっと知りたいという人にはいい本かもしれません。私は挿絵に惹かれて買ってしまいました。


Thursday's Child Sonya Hartnett 著
5月22日 読了

あらすじ: 復員兵の父が出兵のご褒美にと貰ったやせ細った土地に暮らす一家は、5人目の子供が産まれるところでした。真ん中の子ハーパーの目から見た一家が淡々と語られていきます。末っ子が生まれてからは穴掘りばかりに熱中して寝食も穴の中で行うようになった弟のティン。この不思議な弟を除けば、ごく普通の貧しい田舎の一家という感じの家族だったのですが、やがてある事件をきっかけに一家の崩壊が始まります。

メルボルン生まれの作家を実は日本の書評サイトで紹介されているのを読むまで知りませんでした。たまたま図書館にオーディオ・ブックが置いてあったので、家事をしながら聞きましたが、これがなんとも奇妙な話でした。本当に貧しいのです、この一家。そして、狂ったように穴掘りに熱中してやがては家にも帰ってこなくなるティンをまわりが皆白い目で見る中信じ続けるハーパー。最終的にはティンが何故そうしていたのかが明かされるのですが、その奇妙なティンの話と平行して何もないオーストラリアの田舎の貧しい一家の生活が語られます。

子供の目からみた一家の生活ですから、いろいろわからないところもあるのですが、姉と兄が苦労をしている様子も伝わってきますし、優しかった父親が変わり果てていく様子も淡々と語られているだけに壮絶だと思います。時代設定は第一次世界大戦の後だと思うのですが、この田舎の貧しさというのは本当に救いようがないという感じです。児童文学と言えばそうなんですが、ファンタジーとも捕らえられなくはない話です。


あらすじ: ザンドラマスを追って古都メルセナまでやってきた一行は、そこで原型をとどめているアシャバの神託を目にすることができました。その神託には、遠い過去に書かれたトーラックがガリオンに宛てたメッセージがありました。時を越えてのトーラックのメッセージにひるむガリオンですが、ザンドラマスに行く手を阻まれそうになったり、一行を追ってきたマロリオン皇帝・ザーカスに再び捕らえられたり、とうかうかしている暇はありません。

この巻では、初めてザンドラマスの生身が登場します。ザンドラマスはかなりポルガラに対抗意識があるようで、最終的にはザンドラマスかガリオンかという話のはずなのですが、どうもザンドラマスはポルガラの上に立ちたいんじゃないかという感じがします。

この巻でザーカスが再登場しますが、この皇帝、なかなかおもしろい人物で、一行に加わってからはガリオンとの親交を深めていくのですが、将来の西と東の関係を暗示するようで、これも読んでいて楽しいです。


Deltora Quest - #7 The Valley of Lost Emily Rodda 著
5月5日 読了

あらすじ: デルトラ・クエストの7作目。いよいよあと一つとなったデルトラのベルトの宝石を捜す旅は、最後の目的地に到着しますが、最後の宝石の番人に宝石を手に入れるためには番人に挑戦して勝たなければならないと言われます。挑戦とは謎解きなのですが、その謎の思いもかけない答えにリーフ一行は驚愕します。

この作品でもまた、リーフ一行と帝国への抵抗勢力は、一瞬同じ道を歩むかに見えるのですが、互いを信用することができずに終ります。これまでのデルトラ・シリーズよりも謎解きがおもしろいとおもいます。同じ作家のローワン・シリーズはもっと謎解きの要素が強いのですが、そのシリーズ並の謎解きだなと思いました。

この巻の注目すべきキャラクターは宝石の番人とその番人です。番人の連れ歩くペットも凄まじいのですが…。


The Queen of Attolia Megan Whalen Turner 著
4月22日 読了

あらすじ: The Thiefの続編です。大仕事を成し遂げてのんびりしているかと思いきや、とんでもないところでとんでもないことをしでかしているGenは、隣国Attoliaで捕らわれ、投獄されます。冷血さでは上回る者はないというくらいのAttoliaの女王は、今度こそこの小生意気な盗人を何とかしてやろうとてぐすね引いて待っていました。そして、Genにはあまりにも過酷な罰が下されます。打ちのめされたGenは抜け殻同然となってしまうのですが、そうこうしているうちにSounis,Eddis,Attolia3国が戦争を始めてしまいます。そしてGenはある突拍子もない決断をするのでした。

前作に勝るおもしろさ。はらはらどきどき、次はどうなるの!?という話です。前半は前作同様丁寧に人間関係が描き出されますが、Genとお父さんそして従姉の関係が泣きたくなるくらいいいです。そして、後半は息つく間もないくらいのめまぐるしい展開でGenの常人には思いつかないような行動が描かれています。それが驚きに次ぐ驚き。全くもって読者を2重3重に驚かせることが好きな作家です。

前作同様登場人物たちがとても魅力的です。Genはもう言うまでもありませんが、Genのお父さんもなかなかやってくれます。そして従姉とAttolia女王。この4人の魅力的キャラクターがとても活きています。


The Thief Megan Whalen Turner 著
4月14日 読了

あらすじ: Sounisの王のものを盗もうとして捕らわれた盗人Genはある日牢から引きずり出され、王の相談役であるMagusのところへ連れて行かれます。そこでMagusからあるものを盗んでもらいたいと依頼され、Magusとその弟子たち等と旅に出ます。いやいやお供をするGenですが、依頼された仕事はきちんとやってのけるのが主義。目的地では仕事に徹します。ようやく目的が達せられたと思いきや…。

前半はGenとMagus等の人間関係が丁寧に描かれ、反抗的だったGenもだんだんとグループの一員と認められそうになります。Genの盗みを働く場面は手に汗握るはらはらする場面ですが、この物語のすごいところは、そこから先が予期せぬ展開になり、アッと驚く結末となっています。読後の「やられた!」感がたまりません。

ある種冒険物語ではありますが、Genを中心とする人間関係がたまらなくいいです。そしてGenの小生意気ながら憎めない、なんともいえなく愛しい性格がこの物語の一番の魅力だという気がします。


Spirit Walker Michelle Paver 著
3月21日 読了

あらすじ: Chronicles of Ancient Darknessの2作目。6000年前のヨーロッパを舞台に狩猟採集をしながら生きている人々の物語です。オオカミ族の一員でありながら、父親に森で一人だけで育てられたトーラックは、父の仇を取った後大ガラス族に身を寄せていました。しかし森の様々な部族に病が流行り、その解決法は海にあると教えられたトーラックは、単身海へと向かいます。後を追う大ガラス族の少女・レンとトーラックの危険を察して森の奥から出てきたトーラックを兄狼と慕うWolfもまた海へと向かいます。トーラックはあざらし族に捕らえられ、彼らの住む島へと連れて行かれ、そこで病を治す方法を見つけようとします。前作同様何故トーラックでなければならないのか。そこに彼の生い立ちの秘密も隠されていたのでした。

一度は離れ離れになって暮らすことを決意したトーラックとWolfがこの物語でまた一緒になります。狼のWolfの言うことも理解できるけれど、人間として生きていくトーラックの、少しぎこちない人間とのかかわり方がまた読んでいて新鮮です。Wolf言葉がいい。人間のことをTall Tailless(背高尻尾なし)と呼んでいたり、太陽のことをBright Eye(まぶしい目)と呼んでいたり。いかにも、狼ならこういう世界の見方をしているだろう、と思わせるような狼言葉です。

この本の一番の魅力は作者の豊富な考古学・人類学の知識に裏づけされたトーラックたちの生活ぶりだと思います。森や海を汚さないように様々なしきたりがあるし、しとめた獲物への感謝の気持ちや、死後の世界の世界観などなど、6000年前のヨーロッパは本当にこんな風だったのじゃないだろうか、と思わせるところがあります。


Deltora Quest - #6 The Maze of the Beast Emily Rodda 著
3月15日 読了

あらすじ: デルトラ・クエストの6作目。残り2つとなったデルトラのベルトの宝石を捜す旅が続きます。敵にその存在を知られてしまったリーフ一行は、待ち伏せしている敵に襲われますが、そこを助けてくれた少年を旅の道連れとし、敵の目を欺くために二手に分かれることにします。しかし、変幻自在な怪物や容赦ない海賊に襲われ危機に陥ってしまいます。もうだめか、と思ったときに6つめの宝石のある場所に偶然と言っていいほどたどり着くのでした。

この作品では、リーフ一行と抵抗勢力が交差し、手を結ぶかのように見えますが、お互い疑心暗鬼に陥ってうまく強力することはできません。敵も帝国のスパイだけでなく、海賊なども出てきて、敵味方関係が複雑になっています。

毎回登場する新しいキャラクターとしては、渡し舟の船長がなかなかおもしろいと思いました。船長のペットもいい味出してます。


Tales From Earthsea Ursula Le Guin 著
3月5日 読了

あらすじ: ゲド戦記の舞台であるアース・シーで展開される5つの短編とアースシーの描写を書いたお話。時代的には、ローク島に魔法学校が出来る前から、テハヌの物語の後までと多岐にわたっています。The Finderは魔法学校の基礎を気付いた魔法使いたちのお話。The Bones of the Earthはゲドの師であった人のそのまた師だった人が地震を鎮めるために自らの力を使い果たしてしまったお話。Darkrose and Diamondはアースシー版ロミオとジュリエットだけれども、さらに成功とは何かということも考えさせられるお話。On the High Marshはゲドに追われて身を隠している魔法使いのお話。最後のDragonflyは自分が何者であるのか確かめるために女人禁制のローク島の魔法学校へ入門する女性の話。

どのお話も少し離れた視点から人間というものを観察しているようなところがあって、西洋キリスト教社会とはずいぶんかけ離れた雰囲気になっています。このあたりは、ル・グィンのお父さんがアメリカン・インディアンの文化・社会に深くかかわっていたことと関係するのかなと思いながら読みました。

文章も余計な形容詞が省かれて簡潔なそれでいて多くを語れるすばらしい文章だと思います。


Harry Potter and the Goblet of Fire J.K. Rowling 著
3月2日 読了

あらすじ: ホグワーツ魔法学校の4年生となったハリー・ポッターは、ホグワーツの主催する3つの魔法学校対抗のトーナメント出場者になってしまいます。誰かがハリーを陥れようとして仕組んだ罠だとはわかっているのですが、選ばれた以上は出場しないわけにはいきません。3つの大きな課題をこなしてハリーの行き着いた先は復活の儀式を行う宿敵ヴォルダモートの元でした。

子供たちへの読み聞かせとして再読しました。小学校3年と4年の娘たちには、特に最後のほうが怖かったようです。しかし、映画は既に見ていたので、話の大筋はわかっていました。

久しぶりに読み返してみて、映画との違いが改めて浮き彫りになって、この巻は映画にするにはかなり無理があったなぁ、と思った次第です。


Deltora Quest - #5 Dread Mountain Emily Rodda 著
2月26日 読了

あらすじ: デルトラ王家のベルトに輝くはずの7つの宝石を探す旅に出たリーフ一行は、既に4つの宝石を手に入れています。5つめの宝石がある恐怖の山を目指す途中で、一行は伝説の生き物だと思っていたキンに出会います。キンの助けを借りて山にたどり着いた一行は、宝石を手に入れるだけでなく、山の未来へ明るい展望をもたらします。

兎に角幻の生き物キンの一番若いプリンがかわいいです。かわいいながらも、勇敢でリーフたちと一緒に戦うところもいいです。キンの登場だけでなく、リーフたちが最初にキンと出合った森の泉は不思議な水で、飲むと夢の中で現実に行った事のある所や知っている人を訪れることができたりします。

デルトラシリーズはある意味同じパターンのエピソードなのですが、それぞれにおもしろいキャラクターが登場して飽きさせません。


Deltora Quest - #4 The Shifting Sands Emily Rodda 著
2月15日 読了

あらすじ: デルトラ王家のベルトに輝くはずの7つの宝石を捜す旅で、4つめの宝石を見つけるエピソードです。リーフ、バルダ、ジャスミンの一行は旅のお金稼ぎに格闘技大会に出て賞金を狙うのですが、思わぬところで敵と味方が現れます。ついに辿りついた砂漠でもまた試練が待っているのでした。

これまでの物語では、3人だけが帝国と敵対しているように書かれていましたが、このエピソードで組織された抵抗勢力の存在が浮き彫りになります。ヒーローはもちろんヒーローのままだけれど、やっぱりあれだけ悪の限りを尽くしている帝国を倒そうとする存在がないはずがありませんよね。これは、オーディオ・ブックで聞いたので、家事をしながらお話が楽しめたというのはとてもよかったです。

子供向けの冒険物語なので、終わりはある意味ハッピー・エンドだろうと思うと安心して読めます。久しぶりのデルトラだったので、前の話をだいぶ忘れてしまっていましたが、聞いているうちに思い出すこともあってまたおもしろくなってきました。一見敵であるものが味方であったり、同じく帝国に敵対していると知りながらも完全に相手を信用できないところなどは、なかなか複雑でよかったと思います。


「透明人間の告白(上・下)」 セイントH・F著
2月2日 読了

あらすじ: ある研究所に取材に行った主人公が事故で透明人間となってしまうのですが、その存在を知ったFBIが何とか自分たちの研究材料にしようと捕獲に乗り出します。捕まってはたまらないと逃亡するのですが、透明人間というのは便利なことばかりではない…。

透明人間とうものがいたら、どのような生活を送るか、という仮定の話としては、まあまあおもしろかったと言えるかもしれません。20年前の話なので、携帯電話も普及していなければ、電子メールもない。そういうものがあれば、この透明人間さんの生活ももう少し楽だったかな、と思うとちょっとおかしかったりしました。


The Spook's Curse Joseph Delaney 著
1月30日 読了

あらすじ: 闇のモノタチを封じ込めるSpookの見習いとなって6ヶ月が経ち、トーマスもだんだんと仕事に慣れてきました。そんな折、Spookがこれまで敬遠してきていたプリーストタウンに出かける用事が出てきました。Spookが昔戦って勝てなかった闇の力が存在するというのです。しかし、その町は教会の町、魔女や闇にかかわるモノタチを火刑に処することでも知られていました。そして、Spookも闇と戦っているにもかかわらず、闇にかかわる者として捕らえられてしまうのでした。またまたSpookなしでトーマスががんばります。

前作同様夜中に一人で読むのはなんとなく嫌だなという本です。だって怖いんですよ。ホラーじゃないんですが、背中がゾクッとする場面がたくさん出てきます。主要登場人物も前回と同じですが、トーマスとSpookの関係が師弟関係ではありながら、少し友達のようになってきたところもあります。そしてアリス。アリスもまた善と悪を行き来する魔女なのでした。

この巻には、トーマスの不思議なお母さんがかなり活躍します。前作でも彼女は不思議な力を持つ女性として出てきますが、今回はトーマスのお父さんによって新たな真実が知らされます。まだ全容が明らかになってはいないので、これからもお母さんは登場することと思います。


The Spook's Apprentice Joseph Delaney 著
1月21日 読了

あらすじ: 7番目の息子のそのまた7番目の息子として生まれた者は闇のモノたちを感じ取る能力がある、と言われ、Spookと呼ばれる闇を封じ込める仕事に携わっています。トーマスもまた、7番目の息子としてこの地域のSpookの見習いとして修行を始めますが、そんなある日、Spookから気をつけろと言われていた「先の尖った靴を履いた女の子」アリスに出会います。そして、トーマスの身に危険が迫ってくるのでした。

実はこれ、図書館でオーディオ・ブックとして借りたのですが、聞いてみたらのめり込みました。読み手の声もランカシャー訛りでとてもいいし、暗い地下室や真夜中の闇がうごめく様子がとても真に迫ってます。本の裏表紙には「暗くなってから読まないように」と注意書きがしてあるのですが、夜中に一人で読むととっても怖いかも、です。

話の流れははある程度予測がつくので、それほどオリジナリティがあるとは思いませんが、闇の力を封じ込める役目のあるSpookの見習いだと言うのに闇が怖くて仕方のないトーマスが「怖いけれど勇気を出して立ち向かう」というけなげ(?)な姿に共感できます。それに、闇と立ち向かうときのクライマックスに向けての盛り上げ方も読者をひきつける展開になっていると思います。いい子なのか悪い子なのかよくわからない微妙なアリスとの関係もなかなか良いと思いました。


Eldest Christopher Paolini 著
1月9日 読了

あらすじ: かつてアルゲイシアで尊敬されていたドラゴン・ライダーたちは、内からの裏切りに遭い全滅しました。ドラゴン・ライダーたちを裏切ったガルバトリックスはアルゲイシアで圧政をしき、人民を苦しめています。ひょんなことからドラゴンの卵を手に入れたエラゴンは新たなドラゴン・ライダーとして抵抗勢力ヴァーデンと共にガルバトリックスを相手に戦うことにします。前作で強敵シェードのダーザを倒したものの、深手を負い思うように戦うことができなくなったエラゴンは、エルフの国に行って魔法と剣術の修行をすることになります。エラゴンの身体はもとのように戦うことができるのか、また戦でリーダーを失ったヴァーデンはどうなるのか。さらにエラゴンに故郷である寒村・カーヴァホールにも皇帝軍の手が及び、エラゴンの従兄であるローランに危機が迫ります。

一巻目を読んでほとんどすぐにこれを読み始め、700ページ近くあるびっしり書かれた本であるにもかかわらず、あっという間に読んでしまいました。ジョージ・ルーカスの映画スター・ウォーズのコピーだという酷評もあるようですが、そう言われて見れば、似ている部分は多々ありますが、それでも読ませる本だと思います。

本は大筋でエラゴンの修行とローランの帝国軍との戦いの二本立てになっていて、エラゴンの厳しい修行を通しての精神の成長を辿る様子や、愛する者を失ったローランの怒りや悲しみは、とても20代前半の若者が書いたお話とは思えないくらいに精神描写が細かくなされているなぁ、と思います。そして、最後の再会劇は、このまま3巻を読まずにおれようか、というくらいの勢いです。1巻は話としては一応完結していたと言えないことはありませんが、2巻はこのままじゃ眠れないというくらい続きをはっきりと示唆しているので、早くも3巻出版が待ち遠しくなっているのでした。