再建への道

火事から半年たって、我々の地域では、ようやく家々の再建が始まった。なにせ、500軒以上の家が焼けてしまったのだから、家の再建と言っても、そう簡単には、事が運ばない。今回は、家の再建の現状などを書いてみたいと思う。

家の再建

再建が始まった家。バックに焼けたテイラー山が見える

再建への道は、簡単に言ってしまえば、まず、焼け跡の瓦礫を取り除いて地をならし、きれいになったところで、建設業者に設計図から見積もりを出してもらう。そして、設計図、費用と決まったところで再建が始まるわけだが、まず業者が決定的に不足している。キャンべラのような小さな都市では、業者の数も限られているというものだ。さらに、保険がおりた人でも、かけていた保険額では、家が再建できないという現実に直面してしまう。被害に遭った人々の半数近くは、降りた保険金だけでは再建費用の全てをまかなえないそうだ。そして、設計図。前と全く同じ家を建てるのならば、問題はないのだが、一から立て直すとなると、少し手を加えたくなるのが人情で、設計図に手を加えると、役所の認可が必要になってくる。一度に多くの人の設計図変更の届け出があるわけだから、役所のほうも、てんてこまいというわけなのだ。

それでも、まだ、「家を立て直すぞ。」と決めたら物事も動き出すというもので、我々の住む地区でも1軒がほぼ再建し終わり、3軒の家が枠組みができたところだ。(左の写真がその3軒のうちの1軒)。しかし、実際には、家を建てるか、土地を売るかで迷っている人たちがたくさんいて、とりあえず、土地が思うような値段で売れるかどうか、売りに出してみるというパターンが結構あったりする。そうすると、なかなか再建も進まなかったりする。特に年を取った人の場合、立て直して一軒家に住むか、今土地を売ってアパートのような小さいところに移ってしまうか考えてしまうようだ。

右の写真は、そういう迷っている人が売りに出した土地と、バックに再建されつつある家々が並んでいる。この写真の場合は、再建されている家は、政府の持ち物で、低所得者に低家賃で貸し出されるものだ。以前にあった家は70年代に建てられたかなり変なデザインの家だったが、今回の政府の「規格ハウス」は、前より見栄えのいいものになりそうだ。同じ業者が3軒まとめて建てているらしい。

公共施設その他の再建

公共施設の場合、再建のスピードは、その緊急性や、被害規模と比例して行われている。例えば、家から一番近い消防署は、出動する暇もなく山火事に襲われてしまったが、メインの建物が焼け残ったこともあり、3週間もしないうちに元どおりに稼動するようになった。しかし、大きな打撃を受けたストロムロ天文台は、まだ再建への道が始まったばかりだ。天文学の研究の上では、世界的にも重要な位置にあった天文台だが、再建費用や、どういった施設にするのかなどといった難しい問題があり、そう簡単には、ことが運ばないようだ。

そんな中、我々の地域での、ひとつの大きなステップは、火事で焼けた木の橋が新たにコンクリートの頑丈は橋として再建されたことだ。火事から1ヶ月以上放置されたままだった橋のない水道に、通勤・通学の歩行者・サイクリストは大きな迂回を迫られていた。しばらくして、仮設の橋ができ、それほど不自由ではなくなった。そして、火事から半年以上たった今月になって、ようやくコンクリートの頑丈な橋ができあがったというわけだ。ずいぶん長い間緑色の仮設の橋を見慣れていただけに、ちゃんとした橋ができた時には、やはり、感慨深いものがあった。